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スポーツ産業がファストファッションから学ぶこと

2017/11/01

こんにちは。スポーツシューズ・アパレル アナリストの河端 香織(かわばた かおり)です。

流通革命をおこしたファストファッションが、更に情報・製造・流通のつながりを強化し、供給商品の効率化をはかる新たな改革に入っています。この変革にはスポーツアパレル・シューズ市場も注目しています。

弊社NPDグループの米国アナリストMatt Powellが、停滞する米国スポーツ産業に対してファストファッションから学ぶようブログで提言しています。日本でも参考になるかと思いますので、ご紹介いたします。

 

『米国スポーツ産業は停滞しており、ふたたび成長軌道に乗せるためには小売業全体を見渡して学ばねばなりません。中でもファストファッションからはいいヒントが得られると思われます。

 

スペインのブランドZaraはファストファッションの成功例です。Zaraの平均的顧客は3週間に1度の頻度で店舗を訪れます。これほど頻繁に来店する理由は、Zaraが2週間に1度の頻度で商品の一斉入れ替えを行うからです。

スポーツ産業は来店頻度アップのヒントをファストファッションから学ぶことができます。ファストファッションは、生産から納品までのリードタイムを劇的に短縮しました。結果、冷夏や暖冬といった天候不順にも対応しロスを抑えることができます。一般的に衣服に関しては「buy now, wear now(今買って、今着る)」感覚ですが、ファストファッションについては更にショートカットされ「see now, wear now(今見たものを、今着る)」という感覚にさえなっています。
スポーツアパレル・シューズも「see now, wear now(今見たものを、今着る)」タイプに属します。ですから、商品発売の1か月前に写真を公表しても「これ欲しい」という写真を見たときの興奮は発売時には薄れてしまうのです。Twitterのコメント欄に「もう見飽きるほど商品写真を見たのに、まだ発売もされていない」との声がありました。スポーツ産業をもう一度成長軌道に乗せるためには「情報の発信」に制御される前の時代に一度立ち戻り、本当に必要なことは何なのかを再確認する必要があるかもしれません。

 

ファストファッションをけん引するベースは「売り切れ」「目新しさ」の2点です。スポーツ産業も、かつてはこのベースを守っていましたが、今となっては「ひとつ残らず売りつくす」が基本になっています。売り切れた商品は、ふたたび市場に出しても再度消費者から受け入れられます。しかし一旦必要以上に供給し安売りとなった商品は、その後数年間、場合によっては永久に消費者から受け入れられない商品となってしまいます。
商品が早期に売り切れてしまえば、大きな値下げも必要ありません。「売り切れ」はチャンスロスである一方、値下げがないため利益は高くなります。逆に過多な商品供給は、利益を薄くします。

ただし、「売り切れ御免」を狙うべきとはいえ、採算の見合う量であることも大切です。何億足という規模の市場で一万足販売しても、市場から見ればとるに足らない規模で、時間とお金の無駄です。

 

スポーツ産業をもう一度活気づけるために新しい「アイディア」「アプローチ」を取り入れる必要があります。特にファストファッションの「新鮮」「タイムリー」「品切れ」はスポーツ産業でもけん引役となることでしょう。また「プレミアム」「ユニーク」「新鮮」「若者」も成功へのアプローチとなります。』

 

日本でも、ユニクロ、GUを製造・販売するファーストリテイリングが2016年に東京・有明に首都圏最大級の多機能型流通センターを開設し、製造から納品のリードタイムを短縮し顧客の望む商品を効率よく製造・販売するための改革を行っています。

多くのスポーツアパレル・シューズブランドに関しては、直営店以外は製造と販売が別会社となるため、ファーストリテイリングに比べリードタイム短縮は一段ハードルがあがります。しかし米国の例にあるように、値下げに頼らず利益を確保することは、メーカー、販売店共通の目標です。今後両者の間にどのような変化が起こるのか注目されます。

 

Sports Tracker

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