“鬼滅の刃”の次は、”呪術廻戦”が外食産業の救世主となるか
フードサービス部クライアントサービスの石川です。
昨年、驚異的なヒットを生んだ鬼滅の刃を、皆さまご覧になられましたでしょうか。
私は、典型的なパターンで鬼滅にハマった一人です。子供が保育園で、鬼滅のテーマソング「紅蓮華(ぐれんげ)」を覚えてきて、ステイホーム期間に自宅のNetflixで子供と一緒にアニメ版を見たら、子供以上に私が大ファンとなり劇場へも足を運んでしまいました。
見ていない方向けに、鬼滅の刃を説明すると「大正時代を舞台に、主人公が鬼にされてしまった妹を人間に戻す方法を探すために、同じ境遇の仲間と共に鬼殺隊を組んで、鬼退治にいく物語で、笑いあり、涙ありの感動のストーリー」です。日本人が慣れ親しんでいる桃太郎に通じるところがあるのではないかと思います。
外食業界でも、鬼滅の刃とのコラボキャンペーンが、「無添くら寿司」「築地銀だこ」等で行われ、いずれのチェーンでもキャンペーンは想定を超える人気で、くら寿司ではキャンペーンが行われた2020年6月には、平日売上高過去最高記録更新、9月既存店売上昨対比100%超え、既存店客数は97.2%。10月には既存店売上126%、客数115.4%*。銀だこでは、10月既存店売上は108.8%、客数99.3%、11月は売上107.5%、客数96.0%*と、コロナ禍で外食産業が苦戦する中、売上は前年以上、客数も前年並み又は前年以上、と異例のヒットとなりました。
過去にも食品メーカー、外食チェーンでは色々なコラボキャンペーンがありましたが、何故ここまで鬼滅コラボが成功しているのか、これには2つの理由があると考えられます。
1 鬼滅のファン層が、少年漫画層を超えて、子供からシニアまで幅広い年代層に人気で、外食チェーンへの集客効果が見込めるターゲット層が広かった
2 鬼滅にでてくるキャラクターは、全てのキャラのインパクトが強くそれぞれにファンがおり、キャラクター毎のグッズやメニューの提供により、追加メニュー注文による客単価アップやリピートへ繋げやすかった。
実際に、鬼滅キャンペーンの成功チェーンの一つである「くら寿司」での客層変化をCRESTでみると、キャンペーンを行った2020年9月-11月では、くら寿司の主要顧客層であるファミリー層の客数シェアが対前年で+6pts増加しておりファミリー層を獲得できたと考えられます。(CREST比較参考:回転寿司店計 2020年9月-11月ファミリー層客数シェア+1pts増のみ)
メニューでは、キャラクターの特徴を表現したメニュー展開をしていて、メインのお寿司以外に、サイドメニューのうどん、デザートのアイスで異なるキャラを使用し、「子供にせがまれて、炭治郎うどんも追加で注文してしまった。」や「今日は、お腹いっぱいで禰豆子アイスが食べられなかったからまた来たい」というようにサイドメニュー追加による客単価アップやリピートに繋げられたものと考えられます。
鬼滅の刃は、アニメと映画では、まだ全体ストーリーの前半のみが放映された段階ですが、後半部分の放映が決定されたら、ファンの年齢層が幅広くファミリー層の集客に高い効果が見込める点、客単価アップ、リピート獲得に繋げられる点で、外食チェーンにとっても鬼滅とのコラボは、第一期の時と同じように売上増に効果があるのではないかと期待できます。
では、「ポスト鬼滅」と話題が急上昇中の「呪術廻戦」(じゅじゅつかいせん)はどうでしょう。
呪術廻戦は、鬼滅と同様に少年ジャンプの連載からスタートし、少年ジャンプの読者層(小学校高学年~中高生)をこえてファン層を広げている人気漫画です。「漫画連載⇒アニメ化決定」と人気漫画の階段を、鬼滅よりも早いスピードで駆け上がっていて、第二の鬼滅と評されています。ストーリーとしては、「現代の高校生が、ふとしたことで呪いの封印を解いてしまい呪力を身に着けながら仲間と共に、敵(呪霊)と戦っていくバトル物語」です。
グーグルトレンド検索でみても、鬼滅人気がやや落ち着き、呪術の人気が上がってきていることが分かります。
ここで、鬼滅と呪術廻戦のファン層と人気キャラを比較してみます。
【鬼滅の刃】
- ファン層:少年ジャンプの読者層に加えて、子供から大人まで幅広い世代に人気
- 人気キャラ:主人公だけでなく、それ以外のキャラクターも強烈なインパクトを持っており、主人公以上の存在感を持つ。必殺技は、水、雷、炎など、子供にも分かりやすくシンプルな技。
【呪術廻戦】
- ファン層:少年ジャンプの読者層に加えて、20代-30代の成年している男女。女性に人気が高くなってきている。
- 人気キャラ:鬼滅と同様に、主人公以外にも圧倒的な個性を放つ大人気キャラがいる。必殺技は、物理学の要素を取り入れたやや難解な技を複数組み合わせて使う。
呪術廻戦は、仲間とチームを組み、敵を倒していくというストーリー設定と登場キャラの個性が強く各キャラの人気がある点は鬼滅と類似していますが、ファン層は、現時点では若年層10代-30代となっており鬼滅と比較すると限定的です。まだ、アニメ放映の途中なので、今後どこまでファン層が広がるか未知数ではありますが、子供(未就学児)には内容が少し難しいように個人的には感じています。ただ、大手小売りのドンキ・ホーテや幅広い年代層に人気のお菓子「ばかうけ」とのコラボが決定しており、今後の大化けが期待できます。
外食市場の回復への道のりはゆっくりで、外食チェーンにとっては、感染症対策を行って安心・安全な店舗であると利用者に認識してもらう点が最も重要ではありますが、外出自粛ムードの中、どうしても欲しいグッズがある、食べてみたいオリジナルメニューがあると利用者に行きたいと思わせる利用理由を作るための最後の一押しに鬼滅や呪術廻戦がなってくれる事を祈りたいと思います。
(参考) * 既存店売上高、客数は、チェーン公表値を引用
- ホットランド IR情報 月次売上
http://www.hotland.co.jp/ir/monthlyinfo.php
- TVアニメ呪術廻戦公式サイト
https://jujutsukaisen.jp/
- 「ぽぷめでぃ」2021年、「鬼滅の次」と目された「呪術廻戦」
https://cubeglb.com/popmedia/2021/01/25/jujutsu_bunseki/
- 「cubeMEIDA」ポスト鬼滅と噂の呪術廻戦とは?
https://cubeglb.com/media/2020/12/07/jujutsukaisen_hit/
プロフィール:
フードサービス部門 クライアントサービス 石川麗
外資系市場調査会社を経て、2019年にエヌピーディー・ジャパン株式会社へ入社。
エヌピーディーでは、外食チェーン様、食品メーカー様を担当。