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外食・中食 調査レポート

牛丼市場 ~断続的な値下げに消費者側の“慣れ”感が高まる?~

2013/05/21

【東京、2013 年5 月21 日】 日本経済の不況の煽りを受けて2009 年12 月から始まった大手牛丼チェーンの相次ぐ値下げ合戦。外食市場におけるデフレの勝ち組とも言われた牛丼系ファストフード(FF)業態である
が、利用する消費者のマインドはどのように変化していったのか。エヌピーディー・ジャパン㈱が提供する外食・中食市場情報サービス『CREST*https://www.npdjapan.com/service/food.html』から探ってみる。

 

直近1 年では客数減。断続的な値下げに慣れ感

まず、過去3 年における牛丼系FF の客数成長の推移をみてみる(図表1)。大手チェーンの牛丼値下げ開
始時期(2009 年12 月)を含む2009 年4 月-2010 年3 月期において、対前年同期比が+16.7%とプラス成
長を遂げ、その後2 期連続で2 桁成長が続いた。しかしながら、直近の2012 年4 月-2013 年3 月期におい
ては、同-6.1%とマイナスに転じたことが分かる。

【図表1】
牛丼系FF 客数成長率
(対前年同期比)

130521-1

エヌピーディー・ジャパン㈱ JapanCREST® より

 図表2 は、同業態における「牛丼」メニュー喫食者の客単価とその値ごろ感に対する満足度である。値下げ合戦開始時期を含む2009 年4 月-2010 年3 月期は牛丼喫食者の客単価が440 円であったが、翌年度以降は大幅に下がり380~390 円で推移している。同じく過去4 期の値ごろ感の満足度は、直近1 年において「非常に満足」の割合が最も低い(13.7%)。牛丼の値下げ合戦開始からおよそ2 年間は低価格牛丼は評価されていたものの、直近1 年においては支払金額(客単価)にほとんど変化がないにも関わらず評価は低下している。図表1 でみたように、直近1 年においては客数が前年同期を下回っており、この要因の1 つとして、断続的な値下げに消費者が慣れてしまったことが考えられる。

【図表2】
牛丼系FF 牛丼メニュー喫食者
客単価/値ごろ感満足度

130521-2

エヌピーディー・ジャパン㈱ JapanCREST® より

 

 

牛丼の味の評価も低下

最後に、同業態における牛丼の味の評価をみてみると(図表3)、最も評価の高い「とてもおいしい」の割合は、値下げ開始時期を含む2009 年4 月-2010 年3 月期から3 期連続で20%前後を推移していた。しかし、客数が前年同期割れした直近1 年は、16.5%と最も低い評価となっている。

【図表3】
牛丼系FF 「牛丼」味の評価

130521-3

 エヌピーディー・ジャパン㈱ JapanCREST® より

 “牛丼戦争”と言われ、マスコミにも多く取り上げられた値下げ合戦は、客数の増加をもたらしたと同時に、消
費者の低価格牛丼への慣れを促進させた。さらに、牛丼の味に対する評価の下落がみられる。牛丼系FF 各社ともに新しいメニューを市場に投入している昨今、いかに消費者満足を向上させ、新しい価値を提供していくか、今後の各社動向に注目していきたい。

* CREST とは

外食・中食市場において 「いつ、誰が、どこで、何を、どのように食べ、どの程度満足したか」など消費者のあらゆる喫食動態データを、1 年365 日、直接消費者から収集し、年間13 万を超えるサンプル数を元に調査分析できる情報サービスです。(海外各国版もご用意)
詳細は https://www.npdjapan.com/service/food.html